メッセージという力

 社会に出るようになってから、コミュニケーション能力の重要性は想像を超えたものであったということを痛感する。そして、社会的地位が高い人、あるいは有能な人というのは、元々優秀なことに加えそういった外殻によって何気ない一言で他人に大きな力を与え、奮い立たせることができるのだと気付いた。

俺は小説が好きだ。有名な実業家が書いたHowTo本ではなく、

どこの誰ともしれない、ろくな人生を送ってきたのかもわからない、無名の人間が、誰かに己の想念を届けるべく、審査を潜り抜け持ち込み担当とヤイヤイやりあいながら書き上げたメッセージ性のある小説。俗っぽいパロディにまみれていてもいいし、道徳的なものでなくてもいい。美少女イラストにまみれているかどうかも関係ないし、文章量のボリュームも問題ではない。

 どこの誰とも知れない誰かが書いたメッセージに痺れさせられる瞬間が好きなのである。その時俺は人間ではなく(あるいは肩書ではなく)作品だけを見ている。作品だけを見ているのに誰かの想いというものを非常に強く感じることができるからだろう。

 

たとえその作家が一年以上かけて苦労した書いた内容が

偉くて優秀な人がちょっとだけコストをかけてやった講演と同じ程度の効果だとしても、俺は前者を選ぶと思われる。